年の初めに

年が明けた。窓の外に広がる1月の木々を見ていると、厳冬の中に立つ木々を写生していた若い日々を思い出す。後期印象派のセザンヌ(1839-1906)がこの世を去って一世紀、はたして彼の後、物の見方は進んだのだろうか。

確かに20世紀はイズムと称して多くの絵画運動が次から次へと展開された。美術界が、「何が出来るか」から「何をしたいか」の歴史に変わった。そしてありとあらゆる表現の手段が作家の数だけ生まれた時代。絵画のテクニックよりもそのコンセプション、表現の面白さや奇抜さに興味の対象が移った事は絵画表現の世界を広げたので良いことだと思う。

21世紀の初めに私はもう一度自問している。「近代絵画の父と称されたセザンヌ以後、物の見方は本当に深化しているのか?」と。そんな思いで、私は自然を見つめている。そこには色彩の流れとそのムーブメントが光の中に漂い、物体から遊離した色たちが自由に動き回っているのが見えてきた。これを作品にすることによってポストセザンヌ的な物の見方が確立できるのではないかと思う日々である。[…] 日記1848ページ